かにちゃんねる

わたしとわたしの周りの変な人たちの話

私のファーストキスは女の子だったかもしれない

急に秋めいてきましたね。

なんだか切ない季節ですね。

 

こんばんは、センチメンタルかにちゃんです。

 

 

こんな夜には思い出話をしたい。

 

 

 

高校の時、ゆきこちゃんという子がいた。

 

特に美人というわけでもないけれど、小さくてふわっとしてて思わず抱きしめてしまいたくなる感じの子。

 

地味なグループにいたわりには(それはもしかすると女子からの僻みのせいで追いやられただけかもしれないが)男の子にとてもモテて、というより、あいつは直ぐヤらせてくれる的なニュアンスで人気があった。

 

私は特別仲が良いと言うわけではなかったし同じクラスでもなかったけど、廊下ですれ違った時なんかは手を振ったりハグしたりして、私たち友達だよね?という確認行為くらいはしていたように思う。

 

 

ある日の放課後、わたしは忘れ物をして教室に戻った。

外は暗くなり始めていて、しんとした校舎は少し不気味だ。

 

自分の足音が廊下に響くのもちょっと怖くて、

音を立てないように歩いた。

 

教室の前まで来た時、小さな話し声が聞こえたので、

わたしはまたちょっと怖くなって、恐る恐る教室を覗いたら、

 

ゆきこちゃんがいた。

男の子と一緒に(確か別のクラスの女の子と付き合っていたと思う)

 

二人は小声でクスクス笑いながら話していて、

そして、しばらく見つめあった後・・・静かにキスをした。

 

わたしはびっくりして、

見てはいけないものを見てしまった気がして直ぐにその場から離れた。

 

当時わたしはまだ恋愛経験もなかったし、キスとかセックスとか、ものすごく興味はあったけど、そういうことは、本当に好きな人と、とか、たった一人の大切な人と、とか一般的な恋愛観を信じていたので、やっぱりゆきこちゃんは遊び人で、わたしはそんな風に思われるのは嫌だなって、よくそんなことが出来るなって思ってた。

 

 

ゆきこちゃんのせいで、次の日の数学の宿題が出来なかった。

 

 

 

16歳の誕生日、

ゆきこちゃんがメッセージカードをくれた。

いちご味・・・だったのかな、ピンク色の包み紙のチロルチョコと一緒に。

 

わたしは嬉しくて、ゆきこちゃんを抱きしめた。

 

ゆきこちゃんの頬はふにっとしてて可愛い。

そのすぐ近くにある唇は真っ赤でぽてっとしててまた可愛い。

 

何人かの男の人が触れた、くちびる。

 

キスなんて、たいした事ない。

ちょっと唇が触れるだけじゃないか。

 

わたしは唇のすぐ近くにキスをしようとして顔を近づけた。

 

ゆきこちゃんがちょっとだけわたしの方に顔を向けたので、

少しだけ、たぶんほんの少しだけ唇に重なってしまったような気がした。

 

わたしはその時、まだキスをしたことがなかったので、唇がどんな感触なのかよくわからなかったから、あれ?今、すこし唇に触れてしまった気がする・・・と思ったけれど、唇を離して、ゆきこちゃんを見たら、ゆきこちゃんはニコって笑った。

 

ああ、もしかしたら勘違いだったかもしれないな、と思った。

 

 

その夜は友達が誕生日を祝ってくれて、いつもより遅くまで遊んでいた。

 

帰り道、わたしは当時好きだった男の子にメールをして呼び出した。

 

今思うとなぜそんなことをしたのか分からない。

 

そして、告白するんでもなく、

「キスしてみて?」と言ったのだ。

 

当時のわたしには考えられない行動力。

 

彼はキスしてくれた。

 

ひんやり冷たい唇だった。

 

わたしは胸がきゅんとなって、嬉しくなって、

ああ、やっぱこういうのがキスだよね、

好きな人とキスするって、こんな感じなのかって思って、

もっともっとしたいなって思った。

 

夢中になって何回かキスをした。

 

カバンの中では帰りが遅い事を心配した親からの電話がずっと鳴ってた。

無視した。

 

帰ったらものすごく怒られた。

 

 

その後、その男の子とは、こっそり何回かキスをしたけれど、

結局付き合ったりはしなかった。

 

キスしたってことは私の事、少しは好きなんだろうかって思ったけど、そうではなかったみたいだし、私もキスしてしまったからにはちゃんと付き合って私のものにしたいって思っただけで、振られてみると全然好きでもなかったような気がした。ただ、なんで愛してくれないんだろうって悲しかった。

そしてすぐに別な男の子に夢中になった。愛してくれる人が欲しかった。

 

 

わたしは、ゆきこちゃんのことが羨ましかったんだと思う。

 

誰の目も気にせず、他人にどう思われようと、その時、したいと思った人と自由にキスしたり触れ合ったりする彼女が、とても羨ましかった。

 

ゆきこちゃんの目からは、あの窮屈で平凡で同じ事が繰り返されるだけの世界は、どんなふうに映っていたのだろう。

 

 

 

こういう記憶は数年前まですっかり忘れていて、ここ最近急に思い出した。

 

わたしのファーストキスは16歳の誕生日、好きな男の子とって、思っていたけど、今、ファーストキスと聞くとやっぱり思い出すのはゆきこちゃんなのだ。

 

小さくてふわふわしてて、二重の瞳に赤い唇、肩までの髪は少しパーマがかかってて、いつもハーバルエッセンスの匂いがした。

あの可愛い女の子。

 

 

ゆきこちゃんは今、どこで誰と、愛を交わしているだろう。

 

卒業してからは、1度も会っていない。